ATEEZ翻訳

K-POPグループATEEZ(エイティーズ)関連の翻訳を載せていきます

【記事翻訳】[ミミョのUnboxing KPOP]音盤フォーマットにも本気、ATEEZ〈SPIN OFF〉(チャンネルYES)

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3トラックともKPOPの様式美に似ているようで鮮明に異なる展開を見せながらも、ATEEZ特有の危なかしくクラクラとした世界表現を再現している。スピンオフを同じ世界観の中の違う物語と表現するなら、これらのRemixは音盤タイトルのごとくATEEZのスピンオフと呼ぶにふさわしい。(2023.01.11)

文:ミミョ(大衆音楽評論家)

 

ATEEZに付けられる名札のうち、「麻辣味」というものがある。この味わいは、概ね暗く劇的なコンセプトと激烈で刺激的な曲、混乱を加える遊びやこれを音楽的に表現する極端な構造や装置などを成分とする。ATEEZは、デビュー初期には友を愛する楽天的な海賊だったような気もするが、とにかく非常に脱日常的なコンセプトに重きを置いて出発したので、変な方向に逸れてしまった訳ではない。それに、人が冒険をしているといろいろな出来事が起こるものだ。

新曲〈HALAZIA〉も相当な「麻辣味」をもたらしてくれる。暗く切迫した語調と内容の歌詞、アポカリプス後の世界を舞台とするMV、個性が明確なラッピングの交差、鋭い高音と暗い低音が共存するボーカルなどである。サビが伝統的なPOPの文脈において親しみやすさと安心感を与える場面であるならば、彼らにとってのサビは舌を一層痛める時間だ。特有の呪術的なテーマによってさりげなく緊張を与えたかと思えば、突然新しいビルドアップでもするかのように8ビートでキックが落ち、BPMを2倍に上げる高揚感を与えながら高音を連打する。そのようなサビの最後の1節は、2分48秒を経過して新たなクライマックスを作り出すのに再利用される。緊迫したブレイクビートと荒々しいチャンティング、破れそうなシンスの大騒ぎへとつながる後半は、最後に新たな決定打を打ち付ける。ATEEZが既に数回格好良く披露したことのある方法だ。

〈HALAZIA〉が収録されたシングル〈SPIN OFF : FROM THE WITNESS〉には3曲のRemixも収録されている。〈WIN〉の原曲は、荒唐無稽ながらも非常に印象的な歌詞の1節「俺らの船は片道だけ」にスポットライトを当て、重く空虚なドロップタイプのサビに移るか、後半では強烈なビルドアップ・ドロップで華麗な後奏を付け加えた。〈Just One Remix〉はそれに準ずる多彩なセクションを設けながらも、KPOPよりはEDMの流れに接続し猛烈に疾走する。既に〈HEART-TOPPING Ver.〉として編曲されたことのある〈I'm The One〉の〈Eden-ary Ver.〉は、原曲の熱さを冷たい空間へと転換し、よりしっかりとドロップを構成してエレクトロニックに"再解釈"するかのような対称を示す。ドライブ感のあるニューウェーブサウンドに哀傷を込めていた〈Take Me Home〉は、IDIOTAPEに出会ったことで交通安全の心配を生じさせるほどの猪突猛進な暴走に変わった。3トラックとも、KPOPの様式美に似ているようで鮮明に異なる展開を見せながらも、ATEEZ特有の危なかしくクラクラとした世界表現を再現している。スピンオフを同じ世界観の中の違う物語と表現するなら、これらのRemixは音盤タイトルのごとくATEEZのスピンオフと呼ぶにふさわしい。

〈HALAZIA〉の歌詞や、鉄鎖を引っ張る人間の筋力によって(おそらく)超自然的な存在に逆らうシーンなどは、実際はシングルのタイトルが主張する「証人の言葉」というよりも英雄物語の主人公の視点に近いようにも思える。しかし、カバーアートの羽根のような、忽然と消えたもののかすかな痕跡というモチーフは作品全体によく染み渡っている。リミナルスペースと廃墟の概念的な中間のどこかに位置するMV中の空間がパッケージにもスケッチ風に登場し、MVも「かつてあったもの」と「残ったもの」の対照を一貫して描く。まさにこれは物語のスピンオフでありアイドルのシングルだ。多くを提供する一方で拘束される必要のない軽さにもうまく符号するモチーフである。

このシングルは、CDが含まれる〈WITNESS Ver.〉と2種の〈POCAALBUM Ver〉で発売された。近年、環境破壊に関連してKPOP産業ではオルタナティブなパッケージフォーマットが様々登場している。CDを省いてパッケージングを簡素化し、音源は専用プラットフォームでのデジタル鑑賞権を提供しつつも、音盤が持つもうひとつの非常に重要な価値、すなわち所蔵品としてのモノ性は維持しようというものだ。このシングルはフォトカードを陳列するフレームとして使用できるという点が異色である。また、ミニCDサイズの「ミニチュアディスク」が入っているが、これがやや微妙である。もちろん分厚いフォトブックのカーボンフットプリントも無視できないが、オルタナティブパッケージングの重要なアジェンダはプラスチック消費量削減でもあるからだ。しかし、何も記録されていないこの小さな円盤が、今日発売されても鑑賞されない数多くのCDと、音盤かつ「グッズ」としての価値の面では事実上まったく違いがないという点だけは大変興味深い事実と言わざるを得ない。

Remixに多少ケチなKPOPにおいて、ATEEZはデビュー1年を少し過ぎた2019年末にRemixアルバムを発売している。また、国内キャリアと別途に展開されることの多い日本発売盤を世界観連作の中に包摂してもいる。この過程で、既に発売した国内曲の日本語バージョンを収録しながら行われた再配置は、リパッケージの「技術」を更新する試みといえた。それに続いて、〈FROM THE WITNESS〉の物語的なテーマ設定とRemixに関連する一連の音楽的選択は、彼らが音盤フォーマットについての悩みを絶えず続けていることを改めて感じさせる。「麻辣味」に隠れがちだが、ATEEZの濃い味わいが生まれる材料のうちひとつである。